ヤマアラシのジレンマ

人と過ごせばその分傷つく。互いを深く知らない人といるほど傷がつく。そんなふうに思ったことはなかったのに。それとも見えないふりをしてきたんだろうか。いや、その事実を認められるようになってきたのかもしれない。人の放つ何気ないひと言に傷つく。それなら、自分こそどれだけ人を傷つけているんだろうと思う。そして言葉を発することすら億劫になる。当たり障りない会話や関係を築くくらいなら、口なんかきかないほうがマシだ。それでも、誰に誘われてもほいほい顔を出す。一人の時間が欲しくても、週に一度もそんな時間はない。断れないのではなく、人と過ごしたいんだと思う。でもそうすると、傷つくし疲れる。ショーペンハウアーの寓話に、「ヤマアラシのジレンマ」というものがあった。2匹のヤマアラシが身を寄せ合いたいが、針が刺さるので近づけないという話。誰にも理解されないなら全体になってしまいたいという話を見聞きする度に、つまんない事言ってんじゃねえよと思ってきたが、なんとなく分かるようになってきた。年をとったんだな。