剥き出し

痛めた腕にギブスが巻かれた。それは素手でいるより頼もしく優しく暖かく、よく腕に馴染んだ。何年もかけてギブスは厚みを増し、いつの間にか腕の一部となった。それなしの腕を、今はもう思い出せない。とっくに完治しているはずの腕は、少しずつ自由を夢見るようになった。自分の力で存在してみたい。そして遂に自らの手で切断される時がきた。何も望まなければ、ギブスはずっとそこにあったはずだった。その日、久しぶりに出てきた素手を懐かしく満足げに眺めた。


酷い夢を見て起きると、腕を支えていたものが無かった。自分の一部を失った虚無感。言葉に出来ない大切なものを失ったのだと、感触から知った。目に映るそれは思っていたより細く白く、上手く伸ばす事さえできない。吹き付けた風が直接肌に触れた。何気なくいつもそこにあった頼もしく優しく暖かい分身はいない。そうして時間が経つに付け、共に過ごした長い時が二度と戻らない事を理解した。体の一部であったはずのそれは、今更どこを探しても見つからなかった。でも腕は腕として、なんの問題も無くそこにある。少しずつ陽を浴び色が付き、筋肉が付き、栄養が行き渡り、何の違和感も無い、普通の頼もしい腕になるのにそう時間はかからないだろう。単にそういう時期だったのだ。そういうことなんだろう。