雨にもまけず粗茶一服

雨にもまけず粗茶一服
松村栄子


(ネタバレ)


何を読んでも好きだなぁと思える唯一の現代作家かもしれない。お茶の知識はないけれど、登場人物たちが揃いも揃っていい味出すぎなせいか、問題なく楽しめた。


武家茶道坂東巴流家元後嗣、友衛遊馬の家出することになったいくつもの理由の中の一つとして、宗家巴流の比呂希との出会いは語られる。物語を進める上で、どんどん重要な役割を担うこの場面が、あまりにもさりげなく登場していた事に、読み終えて反芻するうちにじわじわ感動する。漠然とした不満の一つに過ぎなかった比呂希の印象は、やがて茶道、そして京都を嫌悪するきっかけになっていたことが分かってくる。と同時に、偶然(にしてはできすぎてるほど)繋がっていく人間関係から、少しずつ解かれる偏見・誤解。「もしかしたら、俺は、あいつに会うために京都まで来たのかな。そして、さっきようやく会えたのかな。」から始まる真実、極めつけは<じいや、ありがとう>で号泣ですよ。


並行するように、どう贔屓目に見ても育て方を誤ったかのように思われた弥一は、終盤の志乃のたった一言で報われるのがまた堪らない。みんなが自分のやるべきことを精一杯やっているうちに、色んなことが解決していく。って話がいくつになっても好きだ。