シロアリと夏のおもいで 弐

シロアリと夏のおもいで 壱


引っ越しまであと数日。昼休みの不動産巡りに代わって、新居に通い掃除や虫予防や寸法測ったりするのが日課になった。夜はなるべく早く帰って娘らを連れ出した。この頻繁なお出かけとマンションの階段が、犬にとっては意外と厳しかったと後に知ることになる。少しでも室内で吠えられないように遊んでた。そうしてきたる週末、色んなものを警戒しながら引越し。とにかく警戒するあまり同僚に更なる迷惑をかけることになったが。それでも警戒しないわけにはいかない状況だった。でも申し訳ないことをした。どうやって恩を返せるのかさえ分らん。そんなこんなで夜にはなんとか無事新居へ収まった。


その晩、どきんさんの様子が急変した。舌を出し肩でぜいーぜー息をきらしているのに、体が震えっぱなし。震え方がでかい。小刻みというよりがたがた。昨年ジステンバーになったばかりなのに。ぐちゃぐちゃな部屋の中で不安に潰されそうになる。新居はかなりの暑さだったのでそのせいかと思い、冷たいタオルを当てて扇いでいたけれど朝まで治らなかった。


朝一でかかりつけの医者に駆け込む。一日かけてたくさんの検査をした。結果は、筋肉痛・・・ 確かに東京時代は階段歩かせなかったし、首里では一軒家。急な階段の上がり降りで疲れたのかもしれない。犬として情けない気もするというか情けない。かなり恥ずかしかったんですけど。でも元々体弱い子だ。ごめんね。とにかく、これでおらの貴重な週末は終わった。何が貴重かって、引越し後はしばらく休みがなかった。泊まりの取材が続けて入り、それが終われば内地行き。忙しさはまったく平気だけど、家が心配で仕方なかった。娘らは慣れない新居暮らしの上、朝から夜中まで留守番。週末丸二日ほど帰宅もできないし、せめて昼休みはバイクで飛んで帰り、荷解きをすることにした。毎日三十分だけ。不動産巡りの頃からひと月以上、昼休みはとっていないことになる。それでもなんとか荷解きを終え、必用な物を買い足し、お留守番グッズもそろえ、どきどきお留守番大会もさせた。取材も宿泊なんとかも終わり、慌しくも笑って過ごせる我が家が完成。


手に入れた。大変な一ヵ月だったけれど乗り切ったんだー。やっと何もかも終わった。そう思って安心したその日、数人が周りを嗅ぎまわっているのを知る。おらが週末どうしているのか知っている。新居はばれているのか。誰がどこまで知っているのか。常に見張られてるような視線に気が狂いそうななか事件はおきた。


つづく(といいな)
シロアリと夏のおもいで 参