シロアリと夏のおもいで 壱

昨年の夏の話。なんだかずっとアリのことは書けなかった。自分で思っているより傷だったのかね。でもそろそろいいかなと思った。きっと忘れちゃうんだけど忘れたくないことは、一人でやり遂げた感は思いのほか多くの気持ちを吹っ切ってくれたってことだ。


当時は書けなかった。どこもかしこも見張られているようで、アク禁もやたらとかけた。怖かった。何が? おらの行動を把握してたいという欲求が。その欲というか衝動というかなんていうんだろ。動機? 執念? 怨念? とにかく目に見えないものが怖かった。いったい何人警戒すりゃいいのよ。今になってみればそんなに怖くない。たくさんの人がいるから。それにきっとあの頃は本当に病んでたんだ。今は誰に何を見られても構わない。私には関係ないし隠すものもない。どーぞごじゆうに。完治したんだ。何が?何かが。


どこから書けばいいんだろう。自分じゃ気付かなかったけど、久しぶりに会った旧友と話しているうちに、おらが少しおかしくなってるのを知った。どんどん痩せてく体を見てこのままじゃいけないと思った。夏の沖縄。炎天下にいつも冷たい体で立っていた。本当に冷たい肌をしていた。何で感覚がおかしくなってたんだろう。宙に浮いてもいるようで、この世界にいないような感覚が抜けなくて、もしかしたら気付かないうちに死んでしまって魂がプカプカ浮いてるんじゃないかとか思ったり。でも、戻ればちゃんと自分の机はあって仕事もあって、それで普通に毎日を生きている途中だったんだって思い出した。何が原因だったかなんて、そんなのたくさんありすぎるんだろうけど、とくかくあの家を出なくちゃ。すぐに。おばぁと話し優しい言葉をもらい、昼休みに不動産屋周りをはじめた。急いでいたこともあって、犬連れはなかなか厳しい。吠えなきゃ良いよとか。肩身の狭い思いは二度とさせたくない。吠えます。そりゃぁもう気が狂ったように吠えますと正直に言うべきなのか…


それでも何日も通ううちに物件も決まった。ナイチャーは手続きに時間がかかるそうだ。部屋の修理も終わってないようで引越しは二週間後となった。でももう一秒だってここに居れない。そう思ってその日家を出た。怖かった。なんかもう何もかも病んでたから。家の空気や柱や畳まで病んでるんじゃないかと思った。運良く同僚の家に置いてもらう。そこでの暮らしは平和だった。久しぶりに落ち着いた。そしてすぐに落ち着かなくなった。しくじった。誰かに付け回されるなんておらには関係ないことだと思ってたのに。そんなことに頭を抱えはじめた頃、電話が鳴った。慌てて娘らを引き取る。新居はまだない。居候の身でありながら、ぎゃわぎゃわ吠える生き物まで置かせて頂けないかと頼んだ。夜中に吠えようもんならすぐ出て行く約束で。ずうずうしいにも程がある。結局、どんだけ粗相しても置いてくれたわけだが… これほど一方的に人に頭が上がらなかったことってあっただろうか。


つづく(多分)
シロアリと夏のおもいで 弐